『K -メモリー・オブ・レッド-』最終回記念インタビュー

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『K –メモリー・オブ・レッド-(以下MOR)』が7/27発売のARIA9月号で最終回を迎えたということで、同作品のストーリー原作であるGoRAピンクこと来楽零さん、そのサポートをされていたレッドこと宮沢龍生さんオレンジこと鈴木鈴さんにお話を伺いました!

 

※最終回記念インタビューということもあり、単行本2巻以降や最終回に関わるお話も含まれていますので、お気をつけください※

 


――皆さまお集まりいただきありがとうございます。本日は、どのように『MOR』が出来上がったのかということを中心にお話をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

一同 よろしくお願いします!

 

――ではまずはじめに、『MOR』の企画が立ち上がった経緯はどのようなものだったのでしょうか?

宮沢 最初にキングレコードの中西プロデューサーと、放送前にコミカライズをやりましょうという話をしていました。放映前にアニメを盛り上げ、ちょうど放映している時期に本を出したいということで、アニメの放映より早い段階でスタートしましょうということでした。もともとコミカライズは講談社さんでということは決まっていて、そのなかでARIAさんが手を上げてくださり連載雑誌が決まった感じだったかと思います。

来楽 あの時は、「じゃあ放送前にどんな話ができるだろう」というのを考えて、主人公の話は無理、《セプター4》の話も難しいかもということで、それなら《吠舞羅》の過去の話だろうということになって。本編中では死んでしまっている十束が主人公がいいんじゃないだろうかということになりました。当時は十束が(アニメ本編中で)死んでしまっていることはハッキリとさせていなかったので、『MOR』では十束の死を伏せて連載をスタートさせました。

 

――なるほど、そのような経緯があったんですね。こうしてコミカライズ企画が決定して、来楽さんがストーリー原作担当として抜擢された理由は何だったんでしょうか?

来楽 赤のお話で、十束がメインでいこうということになったので、十束のキャラ担当だったこともあり、アニメ本編では描ききれなかった《吠舞羅》のことを書いてみたかったのもあったので、やりたいですと私が手を上げました。

 

――GoRAのリーダーでもある宮沢さんが来楽さんを指名したのではなく、来楽さんご自身からだった、と。

宮沢 そんな感じですね。ただ、僕の中ではコミカライズ第1弾は来楽さんにやってもらおうということは決めていた部分もありました。このコンセプトでお話をとなると、来楽さんじゃないとできなかったと思います。

 

――つまり、宮沢さんの構想と来楽さんのお気持ちがうまく合致した結果だったんですね。

宮沢 そうですね。ただ、来楽さんもコミカライズのストーリー原作は初めてだったということもあり、僕や鈴さんがサポートとして入ることになりました。

 

――では続きまして、コミカライズのストーリー原作とはどのようなことをされているのか、お話をお聞かせいただけますでしょうか。

来楽 動作、台詞等を書いたシナリオを作ってお渡ししています。「自分の中ではここからここまでが1ページの構想です」というページ区切りの案も一緒にお伝えしているんですが、私は絵のことについては分からない部分もあるので、漫画家の黒榮ゆいさんに自由に変えていただいています。そうやって上がってきたネームを見て編集さんを通してまた相談をして……といった形をとっています。

 

――鈴木さんと宮沢さんはサポートという形でストーリー原作作業に参加されていますが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?

来楽 こういう話をやりたいというのを私が出して、「このテーマでこういう流れにするにはどうしたら良いか」というのを3人でブレインストーミングのような形で意見を出していって、話の全体像が見えてきたら私がシナリオにしていました。

宮沢 最初の頃は、アニメ本編でモブに当たるキャラクターたちなど固まっていなかった部分がいくつかあって。さんちゃんのキャラクター像は僕や鈴さんの案が元になっていたりします。

鈴木 そうですね。最初の頃はモブたちのキャラを作っていくところから始めて、僕たちも色々なアイデアを出しましたね。結構コメディ要素があるお話の時は僕ら二人がアイデアをたくさん出すというスタイルでした。

 

――コメディというと、馬刺しのお話がありますが、あれはお二人が?

来楽 自分一人で書いていたら、あのような話には絶対にならなかったと思います(笑)。ストレイン絡みの事件が起こって《吠舞羅》と《セプター4》が絡んでいくというコンセプトはあったんですが、三人でそれについて話しているうちに、そのストレインを馬にしようという案が出てきて。自分一人だったら出なかっただろう発想だったので、チームでやって良かったと改めて思いました。

 

――馬刺しエピソードは今でもネタにされていたりしますよね(笑)。

来楽 最初はアンナが抱っこできるくらいの小さい動物という話もあったのですが、むしろアンナが乗れる大きい動物の方が良くない?ということになり、最終的に馬に(笑)。

 

――馬の案を出したのはどなただったのですか?

鈴木 かわいい動物でと言った時に宮沢さんが馬を挙げて。

来楽 アニメ本編で、却下された馬が出てくる案があって、それをここで出そうかということになりました。

宮沢 アニメ最終話のシロたちが学園に戻るシーン、学園祭で逃げた馬に乗るという案を出したら却下されたんです(笑)。

鈴木 だれもまともに取り合わなかった(笑)。

 

――『MOR』のそういったボツになってしまった案で印象的なものはありますか?

宮沢 最終的には夢オチになるんですけど、鎌本が海の王子になるという話の案を出したことがあって、二人に断固拒否されました。

来楽 絶対にダメですよ(笑)。

鈴木 ただ、こうやってボツになる案はあるんですけど、基本的には最初の話のコンセプト自体が変わるということは無かったと思います。

 

――『MOR』のコミカルな部分には宮沢さんや鈴木さんのお力が結構反映されているんですね。

宮沢 僕たちだけではなく、黒榮さんのお力というのも大きかったかと思います。来楽さん一人だと、もちろん十束の死が先にあるというのもありますが、どうしても切ないお話に寄ってしまうことがあって、そこに僕たちが1つ2つ案を出したり、黒榮さんの絵の力だったりで和らげるというかシリアスばかりにならないように、という感じでした。

 

――確かに、切なさや楽しさのバランスがとれていて《吠舞羅》というコミュニティが深いものになっていた印象があります。これは私だけではないと思いますが、「《吠舞羅》に入りたい!」と思う人も多かったのでは。

宮沢 黒榮さんの絵の雰囲気もあって、ここにいたいと思ってもらえる空気が作れたと思います。原作者が3人関わってお話を作り、黒榮さんという凄く優秀な漫画家さんがそれを更に良くしてくださって、単体で読んでも面白いと思ってもらえるものが出来上がりました。

 

――黒榮さんのお話が出ましたので、黒榮さんについても少しお教えいただけますか?

来楽 黒榮さんはコミカルなところをより面白くしてくれる方で、コメディを投げたらより面白くしてくれるという安心感があります。またアンナと周防の話では、描いてみたいエピソードなどありますか、と黒榮さんにお聞きした際に「周防とアンナが二人きりの時にはどんなふうに過ごしているのか見たい」みたいな話を伺ってそれを元に話が出来上がったり、黒榮さんから影響を受けたお話もあります。

宮沢 馬刺しの話で、起きた周防がふと隣を見たら馬がいるというあのインパクトは黒榮さんだからこそだと思います。凄くセンスが良い方です。

鈴木 ものすごいインパクトだった(笑)。

来楽 文章だけ読んでも、あそこまで面白いものにはならないです(笑)。他にも、馬を追いかけるアンディとさんちゃんが立て続けに蹴り倒されるのは黒榮さんのアレンジだったと思います。

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↑第6話シナリオの一部(クリックで拡大)

 

――こうやってお話を伺っていると、本当にいい関係でコミカライズを作っていったのだということが分かります。

宮沢 来楽さんと黒榮さんの相性が良かったから、そうやって作っていけたのかなと。来楽さんが書きたい話と、黒榮さんが表現したいことが上手く噛み合って、素晴らしいコミカライズになったと思います。

鈴木 お二人は本当にいいコンビだったと思います。

 

――このように作られていった『MOR』ですが、今月号で最終回を迎えました。まだまだ書いてみたいエピソードもありますか?

来楽 「これを書いておけばよかった」といった悔いはありませんが、ただ純粋に、《吠舞羅》の物語が終わってしまうことはとても寂しいので、機会があったら『MOR』の時間の彼らのエピソードもまたどこかで書くことができたら嬉しいなと思います。

 

――それでは最後にファンの皆さまへメッセージをお願いします。

来楽 最初からこの終わり方は決めていて、最終話のシナリオも早い段階から書けていたんですが、1年3ヶ月続いていたものが終わるんだって考えると凄く寂しく思います。最後までお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとうございました!

鈴木 手前味噌ですが、たいへんクオリティの高い作品になったと思います。皆さんにもお楽しみいただけたのではないでしょうか。

宮沢 二人と同じ気持です。ARIAさん、黒榮さん、そして読者の皆さま、本当にありがとうございました!またこのメンバーで新しいことをやると思いますので、そちらもご期待ください。


 

皆さま、今回のインタビューはいかがだったでしょうか。『MOR』ストーリー原作チームのお話をお聞きできる機会はなかなかないと思いますので、新鮮だったのではないでしょうか。お楽しみいただけたら幸いです。

そして来楽さん、宮沢さん、鈴木さん、お忙しいところインタビューをお受けいただきありがとうございました!

 

それでは今回はこの辺で。また次回の更新でお会いしましょう!